獏のゆりかご@紀伊国屋ホール

見てきました。いいものみましたー。
会話を主体にした物語の紡ぎ方で、こういうお話が見たいと思ってたなあ、と
しみじみ。とても静かで落ち着きがあり、ユーモアとぺーソスに満ちた
良質のお芝居だなあと思いました。
誰にでもわかる会話と親しみやすい人物像で組み立てられていて、
細かい砂に水がすんなりとしみこんでいくような展開。
ありそうで、なかなかないお芝居だったな…。よいものを見ました。

今の心情的に、毒々しいものや過剰なもの、ことさらに人間の悪を取り上げて
これでもかと盛り上げたり煽ったりするものはお腹いっぱいなところに
昆布やかつおで取られた美味しいダシがいっぱいの、あたたかいおじやを
いただいた時のような気持ち。しみわたるなあ〜。

昨日の安田さんのダイアリーでのお願いもあり、客席はとても落ち着いていた。
というか、これが普通なのでは…?
このお芝居を見終わって、あの静かな場内で、なぜ
うちわや横断幕を出そうという気分になるんだろう?不思議すぎる。
応援したいといいながら、じつは何も観ていないのではあるまいか。

前から思っていたことだけど、カーテンコールでご贔屓さんが出てきたとたんに
芝居の内容を無視して「キャー!」みたいなテンションで迎えるってのは、
なんだか奇妙だと思う。
今を生きる実在の人物が、架空のお話の架空の人物を作り出すのが演劇、
カーテンコール直前まで場内は別の空間だったわけで、そのお話の世界の余韻が
まだ残るなかで、「○○さん、出てきたっ!ワーッ!」みたいな気持ちに、
いきなりなっちゃうというのは、なんというか、無粋としか言い様がない。
もう少し、お話の世界に浸ることはできないのかしら。
それができないのは、物語にそれほどの吸引力がないから?役者に技量がないから?
必ずしもそうとはいえないと思う。
だんだんヒートアップしてきたので、たたもう。


極端な行動は一部のファンなんだけど、その一部と同じ穴のムジナなわけで。
なんともいえないガッカリ感が襲います。
アンケートに「誰さん目当てですか」欄があって、かなり複雑な気分に。
公式のページで「そういうことはやめてほしい」なんて、ご本人自ら書かれないと
分からない、美意識の低さも情けない。
もう2000年代なのに、いまだに昭和の頃と変わってない応援アイテムにも脱力。
横断幕か… 素人のど自慢と変わらないなあ…

誤解を恐れず書かせてもらいますと…。
東京で活躍してるほかの役者さんに比べればまだまだだ、と謙虚なのはよく分かるし、
見にきてくれるお客さんを大事にしたいというのも分かるんだけど…。
うちわやら横断幕やらを持ち出させる、遠い原因のひとつに
「北海道を離れて」うんぬんの発言があるような気がするのは、私だけかしら?
その言葉が変なスイッチになって、ああいった勘違いの母性的なアプローチに
つながっていくのでは…?
もうそろそろ「北海道を離れて」は言わなくてもいいんじゃないかな?
猛者ぞろいの役者のなかで、堂々と勝負していってほしい。
北海道でナンバーワンの動員数なんだから、自信をもってほしいよ。